キョウチクトウスズメについて【ウンモンスズメとの違い、幼虫の飼育】

キョウチクトウスズメ

キョウチクトウスズメ Daphnis nerii (Linnaeus, 1758)は緑色のスズメガの仲間です。
同じスズメガ科のウンモンスズメとは色合いや雰囲気が似ていて、間違えられることもあります。
本題に入る前にまずはウンモンスズメとの違いを確認しておきましょう。

キョウチクトウスズメとウンモンスズメは模様で見分ける

両種は模様が異なります。キョウチクトウスズメの方が大型でやや複雑な模様をしています。

キョウチクトウスズメとウンモンスズメの比較
キョウチクトウスズメとウンモンスズメの比較

また、下翅を確認できればこれも頼りになります。
キョウチクトウスズメの下翅は緑色ですが、ウンモンスズメでは赤色です。

両種は同じスズメガ科ではありますが、実は亜科レベルで異なっており、さほど近縁なガでもなかったりします。
(キョウチクトウスズメ:ホウジャク亜科、ウンモンスズメ:ウチスズメ亜科)

埼玉県にも現れたキョウチクトウスズメ

キョウチクトウスズメはかつては国内に分布していなかった虫で、南西諸島でときおり確認されるいわゆる「迷蛾」でした。
しかし、1974年以降に南西諸島に定着し、以降も九州以南を中心によく見られるようになったようです。

移動能力の高いガで、本州にも飛来してくることがあります。過去に愛知県や静岡県、大阪府などで発生したことがありました。
ただし、九州以北では越冬ができないようで一時的な発生に留まっているようです。

ときおり飛来し、短期的に発生するだけの本州においてはキョウチクトウスズメは珍しい虫といえます。

そんなキョウチクトウスズメがなんと……私の地元である埼玉県の市街地で複数見つかっているという、衝撃的な話題が飛び交っていたのが2023年の晩秋頃でした。

実は私もその時にキョウチクトウスズメに出会うことができた者の一人でした。
前置きが長くなりましたが、本記事では私が出会い飼育したキョウチクトウスズメの話をします。


2023.10.31

同僚から「キョウチクトウスズメの幼虫を近くで見つけた」という知らせを受け、翌日の昼休みに会社を抜け出して回収に走りました(笑)

キョウチクトウスズメの幼虫
すげえ、ほんとにいる

花壇の植物に初めて見る大型のイモムシが3頭ついており、周りには多くのフンが落ちていました。
これがキョウチクトウスズメの幼虫で、大きな眼状紋を持つことが特徴です。

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幼虫が確認された花壇

植えられている植物はツルニチニチソウです。
キョウチクトウとは似ても似つきませんが、これもキョウチクトウ科の植物で、キョウチクトウスズメの寄主植物として知られています。

実際、埼玉で見つかった個体はいずれもニチニチソウ・ツルニチニチソウで得られているようです。

無事に確保できた幼虫3頭を持ち帰り、飼育に挑戦しました。

キョウチクトウスズメの幼虫を飼育する

キョウチクトウスズメ幼虫のエサとなるキョウチクトウは適当に川沿いとかで採ってこれたので、まずはそれを与えましたが……なぜか全く食べませんでした

もう一つのエサ、ツルニチニチソウはあちこちに生えているのですが、大抵は人の家の庭とかで……エサの確保には苦戦しました。
ただ、最終的に自宅の庭にもちゃっかり生えていることが判明し、エサ問題は解決しました(笑)

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ここでもヤモリ飼育の時に買ったケージが活躍しました

キョウチクトウスズメの幼虫は土中で蛹になるため、ケージ内にはピートモスを詰めたタッパーを設置しておきました。

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翌日には土の上をウロウロし始めていた

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何らかの寄生を受けていそうな見た目

キョウチクトウスズメの幼虫が食べるキョウチクトウもツルニチニチソウも有毒の植物なので、やっぱり体に毒をため込んでいるのだろうと思いますが……幼虫に寄生するハエの仲間がいるようで、寄生バエが羽化したという報告もありました。

採集した時点で大きかった幼虫2頭は、1週間ほどで蛹になりました。
蛹になってしまえば寄生は問題ないのだろうか……?

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ずいぶん浅い位置で蛹になったな

タッパーの土に幼虫のフンが落下するとカビが生えるので、上にペーパータオルをかぶせていました。
それも巻き込んで蛹室を作ってしまったので、取り換えられなくなった……

蛹室はけっこう適当でいいみたいで、このタッパー1つで3頭とも上手に蛹になってくれました。

全員が無事に蛹になったら、あとは寒さに気を付けるだけです。
キョウチクトウスズメは最高気温が10℃を下回る日が続くと羽化しなかったり、失敗したりすることがあるようです。

11月も半ばごろで夜は寒い日も増えてきたので、念のため保温球(ヤモリ飼育の時に買った)を使ってケージを常に暖め続けました。

乾燥も気になったので定期的に霧吹きで水も与えつつ、羽化を待ちました。

2023.11.25

1頭目が蛹になってから19日後。
朝、目覚めてケージを見ると、そこには羽化した成虫の姿がありました。

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かっこいいー!!

きれいに羽化してくれました。
私にとってはこれが人生初のキョウチクトウスズメで、その格好良さに感動しました。

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2個体目。羽化直後で翅を伸ばしているところ

残りの2頭も年内には無事に羽化して、この飼育は終了となりました。
何らかの寄生を受けていそうな見た目(卵が付着しているなど)の個体もいましたが、結局は問題なく全て羽化してくれました。

図鑑で見ても目を引く存在だったキョウチクトウスズメ。まさか埼玉にいながらその姿を拝めるとは思いませんでした。

キョウチクトウスズメの蛹の殻
キョウチクトウスズメの羽化殻

蛹の殻の写真も載せておきます。
既に発生が終わった場所であっても、この蛹の殻が残っていれば痕跡をたどることができます。

キョウチクトウやニチニチソウの下の土に大きい蛹があったらまず間違いなく本種だと思います。

キョウチクトウスズメ成虫

なお今回採集・飼育した個体については蛾類学会誌の以下の報告でデータを使っていただきました
飯森政宏,2023.関東地方本土部 (埼玉県・茨城県) および静岡県にて発生したキョウチクトウスズメ.蛾類通信(308):234-237.

報告を見ると同じ年に茨城県と静岡県でも幼虫が見つかっているため、南から飛んできたキョウチクトウスズメが本州各地で一時的な発生をしていたことが伺えます。

2023年が当たり年なだっただけかと思いきや、2024年はなんと東北地方で目撃されているので、本州であればどこで見つかってもおかしくない状況になってきています。

特にこれからの時期、街中のツルニチニチソウなどに注意して過ごすようにしていきましょう。
本州での未記録県はまだまだ多いので、第一発見者になれるかも!

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